もう秋なのでしょうか?

私、ここ数年9月は夏になったんだと思っていました。

だって毎日通う駅までの上り坂を夏風が背中から押してくれていたのに、今日はとうせんぼーーー少し古くなって来たグレイの帽子を右手で押さえ、大切なB4サイズのデザイン帳を入れた大きな紙袋を小脇に抱えてーーーひと苦労しなければならないなんて、

ふと気付くとパンの焼けた香ばしい香りが乗車客のように風に乗ってやって来ます。

ふと耳を澄ますと聞き慣れた果物屋さんの威勢の良い声も混じっています。

「朝食を食べれなかった方、そのままじゃ力が出ないよ、半額、30分間だけ半額にしてあげるよこのバナナ、さー買ってけ!」

「ネエネエ、そいでさー告ったの秋山先輩に」

「それがーーー」

「何よダルマさん決め込んだ訳」

「エミらしいね、あんたきっと一生独身だと思うよ」

「いやだー!」

ふと気付くと5m程先を歩いているいつものJK3人組の会話でした。

”頑張って!”って声を掛けてやりたかったけどーーー私だってまだ出来ていないのに、そう思うと何となく切なくなってしまいました。

もう『秋』なのですか?ーーー少し早すぎませんか、

「絶対だよ!」

「分った、今日の放課後、必ず話すから」

「機関銃抱えて物陰から狙っててやるからさ」

ーーーどうやらもう一度トライするようです。彼女。

「おじさん、そのバナナ下さい」

「あいよ、夏ちゃん、どうしたんだい今日は?」

「好きじゃない秋を大好きな『秋』にしようかなー、なんて」